子供たちへのプレゼント

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"もっと教えて!"

その歴史の時間が終わると、1人の子が目を輝かせながら僕に近づいてきた。

僕はその子をみて、かつての自分とその子とを重ねずにはいられなかった。




歴史の時間




今いるスクールでは、なにかのきっかけがあると、歴史好きな僕が子供たちに簡単な歴史の授業をすることがある。



授業といっても、僕がパワーポイントで作成したスライドショーを流しながら、子供たちに話すという形だ。



堅苦しく難しいものには絶対にしたくないから、クイズをたくさん入れてみたり、笑いの要素を含ませたり、、と工夫しながら作る。



どういう風にすれば分かりやすく伝わるだろうか、、と考えることは大変である一方で、とても楽しい。




学びの原体験



今から8年前。

歴史に夢中になった。

きっかけは、好きな俳優が主演を務めるという大河ドラマを、軽い気持ちで見始めたことだった。



よく人生を変えた出来事などと言うが、これはまさにそうだ。

そのドラマは、当時の僕の好奇心をくすぐり、僕は驚きや感動をめいいっぱい感じた。

気づけば、僕は見事にそのドラマ、歴史の虜になってしまった。



このドラマの背景にある歴史(戦国時代)を、もっともっと知りたい!

そんなワクワクした気持ちが心の底から溢れだすのを感じた。



ついにはドラマを待ちきれず、本を読むことがあまり好きではなかった僕が、自ら本を読み漁り、調べだすようになっていた。



そして、見始めたばかりは歴史の知識はゼロに等しかったはずの僕が、ドラマが終わる頃にはめっきり戦国時代に詳しくなった。



これは、僕の"学び"の原体験だと思う。




喜び



はじめて歴史の授業を子供たちにした時、みんなの反応は予想以上によかった。



"面白かった、またやってほしい"

何人かが言いに来てくれた。



そしてまたある子は、

"自分でもちょっと調べてみよう"とも言った。



目の前にいるこの子たちに少しでも学びのきっかけを手渡すことができた、、そういう実感が湧いた。



もちろん、自分が苦労して作ったものが実を結んだということもあるとは思うが、それだけではない"何か"が、僕にかつて抱いたことのないような喜びを感じさせた。



僕は本当に嬉しかった。



教師に必要なのは、授業をすることで全てを伝えることではない。

教師に必要なのは、授業を通して子供たちの興味を引き出し、子供たちに学びのきっかけをプレゼントすることなのだ。



あの喜びを感じた時から、そんなことを思うようになった。




再会



近々、スクールで宮島に行く機会がある。

僕はいいきっかけだと思い、宮島の歴史について授業をすることに決めた。



いつもの通り、クイズなどを織り混ぜながら子供たちに話していく。

話の途中ふと、子供たちを見た。



授業を聞く子供たちの中に、なぜか目を輝かせた8年前の僕が見えた気がした。

あの時のワクワクがまた蘇えり、8年前の僕と再会をしたような感覚になった。



僕はこの気持ちを静かに抱きしめた。



我にかえると、話を止めていたことに気がついた。



子供たちが不思議そうな顔で僕を見つめる。

そこにはもうかつての僕の姿は見えなかった。

でも、僕の心の中に大切なものが宿ったのを感じる。


声にその思いをのせ、トーンをひととき前より少し上げる。



僕は再び話しはじめた。